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「汐さぎ!庵」(丸亀市綾歌町/2011)が
Amazing architectureというメキシコを拠点としたウェブサイトに掲載されました。
この機会に、汐さぎ!庵の成り立ちから、文章化し直しております。
(これを読んで初めてなぜウサギなのかが分かりました)
英語訳も頑張ってやっております。。。(間違い等々ご容赦願います。。。)
ご一読いただければ幸いです。
 


「ウサギの棲家、あま土の泥団子」地産地消の食堂。
 
水鳥が戯れる池、春になるとピンクに染まる桃畑、目の前に水田が広がる景色の中、近隣の農園で採れた野菜や果物を使った食事が提供される。
 この建築は、近郊の畑からの採れたての野菜と人々を繋ぐ…器のようでなくてはならない。
 だからこそ、野菜や果物の持つ、農家たちの想いや背景、そして、この地域そのものが、着飾ったり、言葉で説明しなくとも、透け見えてくるような場であるべきだと思った。
 
「育てて収穫する」…という行為本来、土が良くないと、どんなに養分を上から与えようとも…健康で美味しい野菜は育たない。だからこそ、人々は道具を使い、手を掛け、まず土を育てることからはじめていく。その原始的な幇助性を見つめ、過程の一端を空間に転化出来ないかと考えた。

香川地方では“あま土”と呼ばれる、畑で使用するこの独特の粘土質を持った土がある。
泥のような粘性を持つその土は、鍬を入れるとブロック状の固まりがコロッと転がる。本来はそれをまた細かくほぐしていく訳だが、その最初に手をかけることで出来る可能性を秘めた固まり…“泥団子“。

食する物の器のさらに下層の器として…匂いのように建築を位置づけると…そのまま建築の表層や空間に浮かび上がらせることで、原点としての土との関係を傍らにそっと置いてあげることができる。
「育てて収穫する…近くで採れた」というだけでない…そこに至るまでの遠い始点を垣間見る事ができれば…だからこそその間にある大切な事柄や地産の持つ本意に気付けるのかもしれない。

もう一つ、施主より与えられた“うさぎ”というモチーフがあった。この地域では商売繁盛・厄除け・開運などの象徴とされる“うさぎ”。本来、土に穴を掘って生活する習性を持つ。“うさぎ”の巣も形状として抽象し、ファサードに“うさぎ“が掘ったような穴を開け、入口とした。野菜好きの“うさぎ”が大きな泥団子に穴を掘って暮らしている…という物語性を付加することで呼応した。
 そして、その入口を抜けると一旦、中庭(施主が育ててる畑)に抜けるような平面構成とし、それによって、内部空間全体が広い里山の景色の中、畑の端っこの縁台で食事をしているような場所となっている。

 

 
この建築の表層は、内外共、畑と同じように、その現場から出た土を職人と施主と共に手を掛け、思案し、加工、施工する事で出来ている。
 

風土に溶け込み変化し続けるその表情は、あま土と同じように時間や想いを積層していく。この建築を通し、さらに、そして再度気付かされるのは、建築も同じか、それ以上に土と関係しているということ。建築も建築行為も土に支えられ、その大地の可能性と共にそこに根ざし時間を刻んでいる。コンクリートやアスファルトで覆うだけではなく、共に生きている感覚・さらに土の匂いや手触りさえもが現代の人にとっては可能性なのだという事なのだろう。

長田慶太

 

 

 追記

instagramの写真が目に留まり、今回連絡を頂きました。
SNSでいろんなことがあるご時世ですが、
目に見えるもの、どう見せるか、ももちろん大事ですが、
目に見えない、背景や人柄や想いなどが透けて見えたり、あえて見せたり。
そういうものが大事だな、と思う今日この頃です。

(そういう私は事務所のHPはもちろんですが、ブログを読んで、この事務所に行きたいと思った一人です。大事。)

ウチノ

 

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